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「あれ、なんでお前いんの?」
CLOSEにも構わず入ってきたのは掛川さんだった。恵子ちゃんは掛川さんに一瞥をくれ、すぐゲームに戻った。
「そろそろなくなるんじゃないかなぁって思って持ってきた」
豆乳焼き芋味一ダース。恵子ちゃんはそれを気持ち長めに見つめ、慌ててゲームに戻った。
「お前キンハー好きだったんだな」
「ディズニーが好きなんです」
「じゃあ今度ネズミの国行くか」
「深道さんとなら考えてもいいですけど、ゆいさんと一緒だったら一人で行った方がましです」
「知り合って一か月の幸太に負けたかー。俺たち六年間の友情はどこ行った?」
「友情なんか一秒もなかったですけどね」
掛川さんは僕の斜め向かい、つまり恵子ちゃんの隣に座った。
「なんか作ってくれよ。エビチリでいいから」
「今日は閉店です」
恵子ちゃんがそう答えた瞬間、彼女の操作するゲームの主人公が死んだ。
「へたくそ」
「うっさい。ゆいさんが隣で息してるせいです。五時間くらい息止めててください」
「あとさ、前から思ってたけど、店閉めるときの札、あれ『CLOSED』じゃね? Dつけとけよ」
「ほんとぐちぐちうるさいですね。知ってますよそれくらい。D取れてどっか行ったんですよ。意味通じるから別にいいでしょ」
恵子ちゃんはついにコントローラーを放り投げた。そして結局、掛川さんにエビチリを作ってあげていた。
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