第1章 異世界に降り立った神様。

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とある世界の創世神は困惑していた。 「これは…なんだ?」 世界の輪廻に囲われた魂は、生命体を媒体に再生と滅びを繰り返す。 また、世界というのは長い年月を経てその身に邪気を溜め込む。 邪気は魂へと侵食を始め、穢されていく。 これは再生時に浄化作業を怠っている訳ではなく、強力な浄化作業が魂を歪めてしまう為だった。 浄化作業の許容範囲を超えて穢れてしまった魂は、穢れを落とし切らず再生し、下界へ堕とされる。 穢れた魂は純粋な魂に邪気を繁殖させていき、悪循環が生まれる。 時間をかけて浄化も可能ではあるが、その間に定められた魂の総数が不足すると、隙間に異形なる者の侵入を許してしまう。 他世界から純粋な魂を分けて貰い、代わりに邪気に染まった魂を明け渡すという事を定期的に行って来た。 これは換気と呼ばれる方法だ。 他世界の魂は邪気を祓うとされている。また、その世界の邪気にも耐性がある為にわずか少数でもその影響力は底知れない。 今回も換気の為に魂をいくつか貰い受けた創世神は、2つの魂に異常なまでの神威を捉えたのだ。 魂に宿る神威とは、神に寵愛を賜りし穢れなき力。 その影響力は他世界の魂という特別さを凌駕する程のイレギュラーを持ち、さらにはそれが2つもあるのだ。頭を抱えずにはいられなかった。 数多の魂から選定する行為は、1つ1つを選ぶなど気の遠くなる作業とされるため、純粋さを基準にその上位から無差別に選び抜かれる。向こうの世界でそのままスルーされて来たのだろう。あるいは暇を持て余した神々の悪戯なのかもしれないが。 「ともかく、これを今更返す事も出来ん。世界を渡った魂は、二度の渡りを行うと崩れてしまう。」 どうしたものかと頭を悩ませるも、解決策を見出せなかった為にそのまま下界に転生させるのだった。 人はこれを現実逃避と呼ぶかもしれぬが、これほどの神威を持つ魂に下手な細工をすればどうなることか。 それは生まれてから数千万年の時を経た神にすら未知数なのだ。 これほどまでの異常事態を慎重すぎる対応で咎められるいわれはない。 「そうだ。この魂を寄越した神が悪いのだ。私は何も悪くないし、想定以上に邪気を祓ってくれるかもしれん。よし、そういう事にしよう。うん。」 やはり現実逃避なのかもしれなかった。
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