第1章 異世界に降り立った神様。

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「まだ身体が馴染まんな。しかも少女に転生とは…。いやはや解らぬものだ」 男なんだけどなぁ。などと間の抜けた言葉を紡ぐ少女。 しかし、村民達は冷めやらぬ熱に呆然としたまま。 少女はとある世界のとある惑星のとある島国のとある地域の名も無き神。星の山神社にその身を置いていた好色家で有名な、或いは神の中では変人(人ではない)扱いを受けている存在そのものである。 とある事情によりこの世界の換気が行われるタイミングで、一時的に自らの階位を下界の生命と同等まで引き下げ、下界に降りた後にその命を絶った。 暫く神としての力が0.0001%まで下がるものの、魂を持つ生命体へ受肉した事により、神すら欺く魂の偽装が出来たのだった。 そうまでして異界を渡る理由が星の山神社の神にはあった。 1つは、ある日出会って一目惚れした少女を追うため。 少女が22歳の時、トラックへ轢かれそうになった少年を助けるために自らの命を賭け、その純粋な魂が換気の時期と重なったため、高確率で選出されるのを見越して異世界に渡った。 もう1つは、今の自分の状況に飽きていたからだ。 本気を出せば複数個の惑星を管理出来る程の実力があるのだが、時間を費やしてそんな面倒なこと。と、現役の管理者が聞いたら神の誇りは無いのかと憤怒されそうな理由だった。 神の身でありながら死を体験し、魂を流れるままに任せ、転生するというイベントは好奇心旺盛な神にとって至極のひと時だったのだろう。遥か上空から溜息が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだ。 「さて…」 未だ固まっている村民達を視界に入れながら、少女はこの世界はどういう世界なんだろうかと期待を膨らませる。 藁の山から降り、手近にいた村民の服の裾を掴む少女。 身長差を利用しての上目遣いを駆使しながら、本性を知るものからは考えられないようなか細い声を出す。 「あの、…私、両親もいなくて…。だから勝手にここを使ってしまいました。ごめんなさい。」 誰だお前。と言われた気がしたがやはり気のせいという事にして、少女は潤んだ瞳で訴える。 「あ…、あ…。はふん」 奇声を上げその場に倒れ伏す村民。 他の者達からはゴクリと喉を鳴らす音が聞こえる。 さっきの口調と全く違う事に関しての指摘など入る事もなく、その場の人間達は少女の次の言葉を見守っていた。
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