第1章

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「・・・この子も、天神さまの梅みたいに飛んでいきたいんやろなあ。」 梅ヶ枝餅の妖精さんが、呟いた。 梅って何のことだろうと尋ねてみると、えらい勢いで叱られた。 「なんちゅう不勉強な!飛梅伝説、知らんのかい!」 その昔、天神さまが人間だった頃、都を追われてここまで来るはめになった天神さまが世話をしていた梅が、天神さま恋しさにここまで飛んできたという。 「境内には、その飛梅やっちゅー白梅のご神木まであるんやでぇ。」 ちなみに、その白梅にあやかって、ソックスと羽は白や!と言う妖精さんは、よくわからないけれど、天神さまに謝ればいいと思う。 「聞きますけど、そのピンクのレオタードと真っ赤なバレエシューズは。」 「飛梅やで?羽衣みたいなばたばたしたもん着とったら、風で他所に飛ばされてまうがな。動きやすいもんでないとな!わしら妖精全員、勤勉なんや!」 色について触れないところを見ると、それは趣味らしい。 飛梅じゃなく、焼き餅の精ですよねと真実を指摘すると、嫌ないいわけが返ってきた。
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