バレンタイン編

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「ま、秋はそんなもんか」 納得できない秋哉をサラリとかわして、夏樹は今度は冬依に視線を移すと、 「じゃあこれ全部、冬依のなのか。やるじゃないか。数だけなら俺より上だな」 ピュウッと高い口笛を吹く。 「うん――」 褒められて冬依はうなずくが、でも半分以上は男から貰ったチョコと知っている秋哉は、複雑な思いだ。 喜んでいいのか悲しんでいいのか。それとも笑うところなのか……。 冬依も、どことなく恨めしげな上目遣いを夏樹に向けながら、 「でも夏兄のチョコの方がすごいよね。これラ・メゾンのだし、こっちはジャン・ポール・エヴァンのだ。ボクまだ、どっちのも食べたことないや」 高級チョコといえばゴディバしか知らない秋哉は、冬依の口からするする出てくる単語に、目を白黒させる。 よくわからないので、秋哉に唯一できる基準で判断しようと、 「それ、高いのか?」 聞いてみると、 「うん、一粒できっと1000円ぐらいするよ」 1000円! コインぐらいの大きさで、薄っぺらいチョコ一枚が、なんと1000円!
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