80人が本棚に入れています
本棚に追加
そこに立っている鈴音を見て、春一は持っていたダンボール箱を床に落とした。
繊細なバラの花がついたザッハトルテとか、割れ物注意のチョコレートとか、
――全部、飛んだ――
「!」
春一はザッハトルテを前にした時よりも固まっている。
大きく目を見開いたまま、まばたきも出来ず、それどころか息をするのも忘れて、硬直状態だ。
「!」
春一にじぃーっと見つめられて、鈴音は恥ずかしそうにもじもじと身体をゆする。
それでも春一が見つめ続けるので、
「あの……」
ものすごくいたたまれないと、耳まで真っ赤にしてうつむいた。
もう涙目になっている。
鈴音は、ーーバニーガールだった。
「ーー」
鈴音は今にも消え入りそうな声で言う。
「お願い春さん。……あまり見ないで」
最初のコメントを投稿しよう!