バレンタイン編

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そこに立っている鈴音を見て、春一は持っていたダンボール箱を床に落とした。 繊細なバラの花がついたザッハトルテとか、割れ物注意のチョコレートとか、 ――全部、飛んだ―― 「!」 春一はザッハトルテを前にした時よりも固まっている。 大きく目を見開いたまま、まばたきも出来ず、それどころか息をするのも忘れて、硬直状態だ。 「!」 春一にじぃーっと見つめられて、鈴音は恥ずかしそうにもじもじと身体をゆする。 それでも春一が見つめ続けるので、 「あの……」 ものすごくいたたまれないと、耳まで真っ赤にしてうつむいた。 もう涙目になっている。 鈴音は、ーーバニーガールだった。 「ーー」 鈴音は今にも消え入りそうな声で言う。 「お願い春さん。……あまり見ないで」
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