バレンタイン編

28/29
前へ
/29ページ
次へ
「冬依がアリスだろう。秋がチェシャ猫。そんで俺がいかれ帽子屋ね」 夏樹の紹介に、いかれ具合がぴったりだと、思わず納得しかけたが、 「で、鈴音が三月ウサギな」 と改めて教えられて、再び視線を向けてしまう。 鈴音のバニーガール姿。 三月ウサギって、こんなんだっけ? 耳もちゃんとついていてウサギには違いないが、でもラスベガスにいるようなバニーガールとは少し違い、上には長袖の燕尾ジャケットを着ている。 首の蝶ネクタイ付きのチョーカーも、寂しい胸元をカバー出来る、少し大きめの優れものだ。 気持ち露出は抑えられているが、それでも、ジャケットの裾からはむっちりした太ももが覗いていて、 『……いや、これはなかなか……』 思わず見入ってしまった。 すると、 「春さんのエッチ」 上目遣いの鈴音に叱られる。 「……あ、ごめん」 慌てて視線を外すと、 「いーえ」 怒りはしたものの、あまり気にした様子もなく、鈴音はクルリとUターンして、弟たちの方へ戻っていく。 「さ、冬依くん、お茶のおかわり淹れるわね」 足元はファーがついたルームシューズ。 そしてこっちを向いた鈴音のお尻には、白くて丸い尻尾がぴょこぴょこと揺れていた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加