バレンタイン編

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そういうわけで、バレンタインに秋哉が手にしたチョコレートは、親友のカズがくれたのと、そして何故かテッペーがくれたもう一個だけである。 合計2個。 まあこんなもんか、と思う。 自分は女子からは怖がられているという自覚があるので、ゼロよりマシだと思うことにする。 「テッペーも、オレに同情してくれたんだよな、きっと」 そんな風にどこか自分を慰めながら家に帰ってくると、 「あ、ちょうどいいとこに来た。秋兄カギを開けてよ」 玄関先で弟の冬依が、両手に3つも、いや4つも紙袋を下げて佇んでいた。 「どうしたんだよ、その大荷物」 慌てて駆け寄り、冬依の小さな手から紙袋を半分引き受けてやれば、 「ふう」 冬依は大息をついて、痺れたのか手のひらをひらひらと振る。 そして、 「助かったよ秋兄。カギは出せないし、腕は上がらないしで、いまオデコでチャイムを押すとこだった」 兄弟の中では一番如才のない振る舞いをする冬依の、そんなおマヌケな姿をちょっと見てみたかったと、少し残念に思いながら、秋哉は、 「これ、一体なんだ――」 聞きかけて、ひと目でわかった。 袋の口から覗いているのは、綺麗にラッピングされたチョコレートの箱の山。 全部、バレンタインのプレゼントだ。
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