80人が本棚に入れています
本棚に追加
そういうわけで、バレンタインに秋哉が手にしたチョコレートは、親友のカズがくれたのと、そして何故かテッペーがくれたもう一個だけである。
合計2個。
まあこんなもんか、と思う。
自分は女子からは怖がられているという自覚があるので、ゼロよりマシだと思うことにする。
「テッペーも、オレに同情してくれたんだよな、きっと」
そんな風にどこか自分を慰めながら家に帰ってくると、
「あ、ちょうどいいとこに来た。秋兄カギを開けてよ」
玄関先で弟の冬依が、両手に3つも、いや4つも紙袋を下げて佇んでいた。
「どうしたんだよ、その大荷物」
慌てて駆け寄り、冬依の小さな手から紙袋を半分引き受けてやれば、
「ふう」
冬依は大息をついて、痺れたのか手のひらをひらひらと振る。
そして、
「助かったよ秋兄。カギは出せないし、腕は上がらないしで、いまオデコでチャイムを押すとこだった」
兄弟の中では一番如才のない振る舞いをする冬依の、そんなおマヌケな姿をちょっと見てみたかったと、少し残念に思いながら、秋哉は、
「これ、一体なんだ――」
聞きかけて、ひと目でわかった。
袋の口から覗いているのは、綺麗にラッピングされたチョコレートの箱の山。
全部、バレンタインのプレゼントだ。
最初のコメントを投稿しよう!