バレンタイン編

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思わす素直に、 「トーイやるなぁ」 感嘆の声を漏らす。 秋哉も冬依と同じ中学だったからわかるのだが、中学校のほぼ全学年の女子から貰ったのではないかと思えるほどの数だ。 冬依の学校は、女子より男子の人数の方が多くて、女子の数は全体の約3分の1。 全部で100人程度だろう。 そして、この袋に入っているチョコレートの数も、ちょうど100個ぐらいだから、冬依は全校の女子からチョコレートを貰ったということになる。 でも冬依は、秋哉に褒められても表情を変えることなく、空いた方の手で自分の鍵を出し、ドアを開けた。 それから、 「全然嬉しくないよ。それ半分以上は男子がくれたチョコだし」 「は?」 思わず聞き返す秋哉に、 「最近は男からもチョコレートをあげるんだって。ボクはてっきり、逆チョコの話かと思ったら、みんなボクに持ってくるんだもん。ちょっと気持ち悪い」 散々な言いようである。 でも……、その気持ちもわかる。 男が男からチョコを貰っても、あまり嬉しくはない。 テッペーが秋哉にくれたチョコにも、冗談だと思いたいが、『本命』と描いてあった。 複雑な気分がした。 「トーイ、お前も男にモテるのか?」 つい聞いたら、 ――バン!―― 秋哉の目の前で、ドアが強く閉められる。 冬依が直視したくない現実を、見事言い当ててしまったらしい。
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