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美術館前の広場には、色、高さ、太さが様々な石柱が数十個、ランダムに配置されている。
バイクを停めたオレが追い付くと、手頃な大きさの石柱の上に立ったアイツが全身で手招きしていた。
「ねー! はーやーくー!」
「いや、そんなに急がなくても展示は逃げないだろ…… って、それ、乗っていいのか?」
「え? なんで? フツー乗るでしょ、こーゆーの見たら」
「……そこのプレート、見ろよ。なんか有名な作家のインスタレーションじゃねーの、これ?」
「え、そーなの?」
プレートの方を見ようとした彼女がバランスを崩す。慌ててその手を掴むと、両腕が首に絡んでしがみ付かれた。
その体勢のまま「よっ」と声を掛けながら飛び降りる彼女。
「よっ」じゃねーよ。髪がくすぐったい。あと、なんだか柔らかい。離れろ。
「ね、さっきのどこ?」
「あぁ、ちょっと待てって」
オレのポケットに侵入を試みる彼女の手をピシリと払いのけながら、職場でこの前見つけた美術館の優待チケットを取り出す。
それを受け取る彼女は、絵に描いたようなエヘヘ顔。ちょっと手に負えないくらい眩しい。
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