午後 6時57分

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 七輪の中で、赤く照り輝く木炭。  金網の上では、厚切りの牛タンが透き通った脂を滴らせながら、その身をゆっくりとくねらせ…… あ、また取られた。 「ちょっと、それ、オレがじっくり育てたのに……」 「もう食べ頃でしょ。これ以上焼いたら硬くなって勿体無いし」 「いや、まだ少し赤いだろ、それ。七輪に戻した方が…… あ、食べた」 「女は決断力よ。人に焼かせた肉。そして、一仕事終えた後のビール。かぁーっ! 堪らないわー!」 「一皮剥けばオッサンかよ。だいたい一仕事も何も、軽く挨拶しただけだろ」 「あ、そーゆーこと言うかな? 私のお陰で丸く収まったんでしょ、さっきの後輩ちゃん達?」 「いや、確実に誤解してたから、彼女達。週明け朝イチで給湯室ミーティングの餌食だから、オレ」 「何よ、誤解されて何か問題でもあるの?」 「それは……」  仕事の忙しさにかまけてプライベートに手を抜きまくり、呆れた後輩に先日別れを告げられたオレ。  問題なんて、何一つなかった。  だが、それをあっさり認めるのも何だか悔しい。むむ。何とか違う方向に話の流れを持って行かねば…… 「ってか、そっちこそ、急にどーしたんだよ。今回はオレがメシ代出す番だったのに。それをいきなりスキップした上に、焼肉奢ってくれるとか」 「んー 前回の焼鳥屋さん? アレ、ちょっと失敗だったでしょ。私の選択ミスだったし、急に付き合ってもらったから…… なんとなく?」 「……なぁ、何かあった?」 「え、なんで?」 「いや、なんか今日、いつもよりテンション高かったってゆーか。なんか無理してはしゃいでる気がしたからさ」
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