午後 9時43分

2/4

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
 まだ飲み足りないと主張する彼女をタクシーに押し込んで、運転手に住所を告げる。  寝言混じりにボヤく彼女をやり過ごすオレは、いまきっと仏像みたいな顔をしている。  ってか、いつキャミソール一枚になったんだ、コイツ。引っ付くな。酒臭いし、素肌がやたら熱い。 「ほら、着いたぞ。降りて」 「無理。抱っこ」 「いや、何歳だよ」 「お肉食べさせてあげたでしょ。おんぶ」 「……背中にオエッてしたら、すぐに降ろすからな」  ホントに酔ってるのか、コイツ。  走り去るタクシーのテールランプを見送りながら、こっそり呟く。  だが、耳元に掛かる息は熱く、背中に伝わる鼓動もかなりのハイビート。 「ここ、どこ?」 「どこって、自分のマンションだろ。気付けよ」 「歩けない。連れて上がって。もしくは、連れ去って」 「もう言ってること支離滅裂だから、さっきからずっと。で、鍵どこだよ」 「んー お尻のポケット、たぶん」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加