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枕の下でスマホが鳴動している。
今日は……土曜のはずだ。ってことは、目覚ましじゃない。寝ている間は職場、親族、あとは親しい友人からの着信しか受けない設定にしてある。
朝早くにコレが鳴るってことは……やはり職場なんだろうな。
手を伸ばして液晶に指を滑らせ、耳に押し当てる。どうせ昨日の議案の件だろう。各部署の意見も全くまとまらないまま、ご丁寧に再検討の課題までつけられて差し戻しになったからな。
「……はい」
「あ、おはよー」
やや間延びした女性の声が、耳元で響く。記憶の中の声紋データベースを走査、一致件数が一件。
何ヶ月振りだろう。半年は経っていないはずだけど。
「なに?」
「いま、駅前着いたよ」
「……はい? 誰が?」
「私が。駅前にいるの。だから来て」
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