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思わず、深い溜息が漏れた。
スピーカーの向こうから雑踏のざわめきと、彼女のクスクス笑う声が伝わってくる。
「なぁ、昨日さ、仕事遅かったんだよ」
「それはお疲れさま。何分で来れる?」
「相変わらず人の話聞かないな…… シャワー浴びていい?」
「ダメ。すぐ来て」
「寝癖、凄いんだけど」
「んー 流行の無造作ヘア?」
「そんなレベルじゃないって。オレの髪質、知ってるくせに」
「はぁ、仕方ないな。三十分あげるよ」
なにが「仕方ない」だよ。オレの至福の休日をどうしてくれるんだ……
と胸中で毒づいてみるけど、我ながら説得力に欠ける。久し振りに耳にする彼女の声のせいで意識はすっかり覚醒して、むしろ浮足立っていることを自覚。
ちょっと、いや、かなり悔しい。
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