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シャワーの温度を高い目に設定して、頭から浴びる。ついでに歯ブラシも咥えて、シャカシャカ。ヒゲは……アイツだし、このままでいいだろ。
手早く体を洗ってバスルームを出ると、タオルで頭をガシガシ拭きながらクローゼットを漁る。
とりあえず、着古して色褪せたジーンズの上に白いシャツを羽織った。
ハンガーに掛かったスーツが目に入る。
そうだ、コレを渡してやろう。
目当ての物を探り当てると、財布、携帯と一緒にジーンズのポケットにねじ込んだ。
時計に目をやると、三十分を既に五分ほどオーバーしている。髪は……まぁ、いいか。季節も暖かくなってきたし、すぐに乾くだろう。
とりあえず手櫛で後ろに流して、玄関のドアを開く。
バイクに跨ってキーを捻り、エンジンをスタート。川沿いの桜並木はすっかり花弁を落として、葉桜が初夏の風に瑞々しい。
ヘルメットの下で深く息を吸い込むと、出会った頃のアイツの凛とした姿が脳裏に浮かんだ。
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