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馴染みのカフェにバイクを停めていると、テラス席で小柄な女性が手を振るのが見えた。
胸の中に、微かなさざ波。
急いでほいほいと向かうのも何だか悔しいので、わざとゆっくりヘルメットを脱ぐ。
彼女が座るテラス席を横目に、いったんスルー。店内に入って、マスターにクラブハウスサンドとコーヒーのセットを告げる。
一呼吸置いて、振り返った。
今日のアイツは真っ白なカーゴパンツに、なんだかクシュクシュした質感の黒シャツを羽織っている。透け感のあるシャツの下から、ラベンダー色の花柄キャミソールが薄っすら見えた。
上半身は女性的なのに、ボトムはクラッシュ加工でややワイルドな印象。いまも無造作にホットドッグを噛りながら、こちらにヒラヒラと手を振っている。
そのギャップが何とも彼女らしくて、思わず目を細めてしまう。
はやる気持ちを抑えながら、ゆったりとテラス席へ出た。
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