悩む編集者たち

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「お困りのようですね!」 いきなり編集部に入ってきたスーツ姿の男はそう言った。 「君は誰だ?」 編集長が聞いた。 「テラバイト社の神代と申します。AI作家にお困りの皆様に我々が開発したAI、HENSHUをお使い頂きたいのです」 「ヘンシュー?まさかAIの編集者なのか?」 「そのとおりです。我々のAIはBUNGOの作ったつまらない文章のみを感知することができます」 神代という男は自信たっぷりにセールスした。 「AIじゃない作品を感知してしまう可能性は?あるいはAIの作品がすり抜ける可能性はないのか?」 「絶対は言いませんが、それはAIが優秀な作品を作るのと同じくらいの確率です」 「つまり、ほとんどありえないということだな」 編集長が頼もしそうに言った。 「よし、料金次第では考えよう」 「本気ですか、編集長?」 カドカワは編集長の言葉に自分の耳を疑った。 「そうだ。AIが書いたであろうクソ小説を見つけ出し、それを除外してもらう。これで人間のものだけを審査できる」 「いや、しかし……」 「AIが書いたもののうち1万作に1作くらい良作はあるかもしれない。それは認める。しかし、時間がなさ過ぎる。むこうは1日に1万作を書くんだぞ。こちらも1万作を裁ける編集者が必要なんだ。これが好きかどうかなど関係なく、我々に他の選択肢はない」 「本当によろしいんですか……」 カドカワはいやな予感がした。 その後、AI編集者は本当に1日1万作のクソ小説を裁き始めた。その後、クラウドシステムであちこちの出版社がこのAIを共有し、クソ小説を処理し続けたAI編集者は次第に凡作か良作かも判断できるようになり、自分で良作を書けるようになった。 1日に1万作の良作小説を書けるAIの誕生であった。
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