0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お困りのようですね!」
いきなり編集部に入ってきたスーツ姿の男はそう言った。
「君は誰だ?」
編集長が聞いた。
「テラバイト社の神代と申します。AI作家にお困りの皆様に我々が開発したAI、HENSHUをお使い頂きたいのです」
「ヘンシュー?まさかAIの編集者なのか?」
「そのとおりです。我々のAIはBUNGOの作ったつまらない文章のみを感知することができます」
神代という男は自信たっぷりにセールスした。
「AIじゃない作品を感知してしまう可能性は?あるいはAIの作品がすり抜ける可能性はないのか?」
「絶対は言いませんが、それはAIが優秀な作品を作るのと同じくらいの確率です」
「つまり、ほとんどありえないということだな」
編集長が頼もしそうに言った。
「よし、料金次第では考えよう」
「本気ですか、編集長?」
カドカワは編集長の言葉に自分の耳を疑った。
「そうだ。AIが書いたであろうクソ小説を見つけ出し、それを除外してもらう。これで人間のものだけを審査できる」
「いや、しかし……」
「AIが書いたもののうち1万作に1作くらい良作はあるかもしれない。それは認める。しかし、時間がなさ過ぎる。むこうは1日に1万作を書くんだぞ。こちらも1万作を裁ける編集者が必要なんだ。これが好きかどうかなど関係なく、我々に他の選択肢はない」
「本当によろしいんですか……」
カドカワはいやな予感がした。
その後、AI編集者は本当に1日1万作のクソ小説を裁き始めた。その後、クラウドシステムであちこちの出版社がこのAIを共有し、クソ小説を処理し続けたAI編集者は次第に凡作か良作かも判断できるようになり、自分で良作を書けるようになった。
1日に1万作の良作小説を書けるAIの誕生であった。
最初のコメントを投稿しよう!