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どうして人は死ぬのだろう?
俺はたいして広くもない公園で、ふと、そんなことを考えていた。
人は死ぬ。人でなくても死ぬ。有機物だろうが、無機物だろうが、この世にあるものは全て、死に至る。
それは、人のもつ感情も例外ではない。
友情も、感情も、信用も、信頼も、例え、永遠を誓った愛ですらも、全て、例外なく、死に絶える。
この世にあるもの全てに終わりがある。
この世にある全てのものが、死ぬ為に、終わりを迎える為に存在しているんじゃないのかと思うぐらい、全てのものが、例外なく、死に終えるのだ。
それが運命。生まれたときから、皆に定められた宿命。
産まれ、
生きて、
死ぬ。
人生という、一種のシュミレーション・ゲームの中で、何を選択し、何を選び、どんな結果を迎えようがそれは同じ。最終的には、みんな死ぬ。死んで、無意味に、堕する。
死こそが、人生の終着点。
死こそが、運命の終着駅。
死こそが、生命の安住の地。
不条理で、不平等で、不公平で、不誠実なこの世の中で、死こそが唯一、条理的で誠実で、そしてなにより、公平で平等だ。
夜空を覆っていた厚い雲が流され、綺麗な満月が徐々に姿を切り裂いていく。公園の片隅に佇む俺の姿を、闇の中に浮かび上がらせていく。
九州の熊本県と呼ばれる田舎街。その高平と呼ばれるマイナーな地区。時刻は既に午前零時。静まり返った住宅地の一画。名も無き小さな公園に、俺は一人で佇んでいた。
一人で、たった一人で。
目の前に、一人の男の死体を置いて。
「……って、一人で感傷に浸ってる場合じゃねえよなあ」
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