1 日々

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「というと?」 「だって飛び降りた女子生徒の死体はどこにもなかったって話じゃないですか」 「あー・・・」 そうなのだ。カメ子の言う通り女子生徒の死体は見つからなかった。しかし夜の見回りをしていた警備員やその日たまたま忘れ物を取りに行っていた二人の生徒の目撃情報があったため学校側は屋上の出入りを禁止にした。 「まぁ遅かれ早かれ時代の流れで屋上は封鎖されていたと思うけどね」 「今時屋上が解放されてる学校なんて聞きませんしねー。高校入ったらイケメンと屋上で弁当食べるっていうのが私の夢だったのに・・・」 「さらに夢壊すようで悪いけど、今時みんな学食でお昼ご飯食べると思うからそもそも」 「はいそこまでですケイ先輩!それ以上言ったら引っ叩きますよ」 「いや仮にも先輩に引っ叩くってお前・・・」 まぁカメ子は小柄なので引っ叩かれても痛くなさそうだけど。 肩にかかる長さの黒髪にパッチリとした目。さらに身長が低いので黙ってれば人形みたいに可愛い子だ。 「カメ子は本当にキャラで損してるよなぁ」 「ウルセェです」 「ははは。ごめんごめん」 「まったくもう」と不満げに言いながらカメ子は立ち上がると校庭に目を向けた。 「先輩も運動部と兼部したらどうです?先輩文化部員のくせに、スポーツできるらしいじゃないですか」 「いやいや、できるってほどじゃないよ」 「でもこの前体育でサッカーの授業の時ゴール決めてたじゃないですか」 「あー、運良くだけどな。しかしよく見てたね」 「え、あ、ぐ、偶然見たんですよ」 「ふーん。そっかそっか」 「・・・ちょっとは食いついてよ」 「え、今なんて」 ちょうどその時、部活動の終わりを告げるチャイムが鳴った。 「じゃ、じゃあ私帰りますね!」 「あ、うん。また明日」 そう言ってカメ子はバッグを持ってそそくさと部室から出て行ってしまった。 なんて言ったか聞きたかったのだが、まぁ明日覚えてたら聞こうかな。 僕も机に出していた本(読もうとしていたのだがカメ子と話していて結局読まなかった)をしまい、鍵を閉めて部室を後にした。
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