1 日々

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そんな下らない話をしているうちにいつの間にか学校の近くまで来ていた。ここまでくると周りを歩いてるのは同じ高校の奴らばかりで知ってる顔もちらほら見える。同じクラスの友人や、クラスが離れてからあまり喋らなくなった微妙な距離感の同級生、全く接点のない先輩後輩が各々で他愛ない話をしながら学校に向かっている。 その人混みの中で僕は我が天文学部の部長、去之原 涼 (サリノハラ リョウ)があくびをしながら歩いてるのを見つけた。 「お、去之原先輩いるぞ。声かけなくていいのか?」 どうやらエイジも気づいたらしい。僕の背中をバンバン叩きながら聞いてくる。やめて、肺の空気全部出てまう。 「いいんだよ。どうせ放課後部活で会え、ないなぁ。うん。どうせサボりだ」 「部長がサボんのかい・・・」 まぁ仲が悪いわけではないし、文化祭に向けての準備が本格的になったら部室にも顔を出すだろう。 「でもいいよなぁ。部員がほとんどサボってるおかげで瓶原ちゃんと部室で二人きりだべ?俺なんか部室入ったら男ばっかでむさ苦しいのなんのって」 「いやいや。何度も言うけどカメ子は僕にとって」 ただの後輩、といいかけたところで突然首元に傘の持ち手部分が背後から現れた。 その瞬間僕は全てを悟った。あぁそうか、僕はここで死ぬのだと。カメ子に殺されるなら、悪くない、いい人生だったー。 「バカな事言ってんじゃねぇですよ」 「あれ、口に出してた?」 「えぇそれはもう安らかな顔で仰ってましたよ」 こいつは失敬。 「それでそれで?僕にとって、なんですか?私、気になります!」 「かわいいかわいいチンチクリンです」 「結局チンチクリンじゃないですかぁーーー!!」 「待って引っ張らなグヘェェェェェェェ」 これが僕の、天川彗のいつも通りの日常である。 僕の青春の1ページ。明日が来て、当たり前の日々。 失くして初めて、大切さを知ることができるモノ。 [続く]
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