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「え、ああ、ごめん。でも僕は」
「…それが貴方の優しさだって?」
「うん」
「分かってるわよ、分かってますとも。でもね、貴方の優しさはあたしの孤独よ」
「ごめん」
「何に対して謝るの?」
「寂しい思いをさせて」
「好きよ、貴方がとても好き」
「…イエスと言いたいよ…でも」
「今、伯父上と同じ過ちを繰り返さないかって心の中で溜息ついたでしょ?」
「どうして分かるんだい、心が読めるの?」
「馬鹿ねえ!手に取るように分かるだけよ」
弾むようなリップ音と共に、蘭堂の頬には真っ赤なキスマークが刻まれる。
そして跳ねるように立ち上がると、軽快に足が生む、ステップ。
「ねーえ、蘭堂。血が苦手な吸血鬼には、あたしみたいなおかしな血が流れる人間の《生贄》がお似合いでしょう?」
「…ルナ」
「大丈夫よ、最初の過ちは二度と同じ過ちを繰り返さない為に存在するんだから」
「それ、誰の言葉?哲学者の格言みたいだね」
「これはあたしの言葉よ」
「胸に複写しておくよ」
「美しい字で書いて頂戴ね」
蘭堂はふらっと立ち上がって、妖艶で愛らしい人を抱きしめた。柔らかな感覚に顔がほころび、手にじんと熱さが広がる。
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