血液ショコラと臆病キング

4/14
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
女はくくっと擦れた笑い方をしながら、床に落ちていた埃まみれのドレスを「あたしの一張羅」と言いながら纏った。 「さ、何処に行けばいいの?」 「こ、こちらへ」 同じ世界で生きて来た女達は「ルナ」「元気でいるのよ」と声を掛けるけれど、彼女は振り向きもせず、片手を上げるだけだった。 「なりたかったのよ…あたし、本当に《生贄》に。そうね、もう百三十年ぶりか」 ルナは親指のささくれを前歯で噛み、つつーっと皮膚を裂いていく。 するとそこからは甘い香りとチョコレート色が浮かび上がってきた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!