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蘭堂の伯父である先々代の王・綺静グルートは王としての器が足りていない王だった。
蘭堂と同じ位…いやそれ以上に心優しく無垢であった彼は《生贄》を愛してしまった。
そしてその間に子供まで誕生していた。
これを知っているのは蘭堂だけだった。
本を借りようと入った伯父の書斎。
書斎の壁には全て本棚が並んでいてありとあらゆる本が並んでいた。どれにしようか、と背表紙をぐるりと見渡して、ハムレットと書かれた背表紙に手を伸ばす。
その瞬間に地響きが唸った。
「え?」
そして本棚が動き、目の前に小さな空間が広がった。
そこには聖母マリアのように、腕に抱いた赤子へ乳を飲ませる、《生贄》の姿があった。
「秘密を知ってしまったからには共犯者になってもらうよ、蘭堂」
暴力は嫌いでも、策略を企てるのを好んだ伯父はにこりと微笑んだ。
それから蘭堂は「伯父上に史学を学ぶ」という嘘をつき、彼の書斎を訪ね、幼い従妹の相手をするようになった。
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