16人が本棚に入れています
本棚に追加
「…」
悪霊を見て桜梨は気の毒に思い悲しくなる。
…父さんが言ってたな…この世に留まる幽霊は悪霊ばかりじゃないって…
そう思い出すと、桜梨は真っ直ぐ悪霊を見詰め…
「僕の家族は他界しているので…ずっと一人で住んでます。家事力ゼロなので料理は作れません…」
「それでも良いなら…僕の家に来て下さい。教えて頂ければ嬉しいです」
照れ臭そうにはにかみながら、桜梨は悪霊に言うと…
悪霊にスッと手を差し伸べる。
『え…?本当に良いのか?』
桜梨の言葉にびっくりして悪霊は目を丸くする。
「はい。悪い幽霊さんでは無いので大丈夫です」
笑って桜梨は悪霊に答えた。
『ありがとう…不束な者だが…宜しく頼む』
涙ぐんで悪霊は桜梨の手を握った。
パアアッ
次の瞬間、悪霊が光り輝き…
真っ黒いオーラーが消えて行き…茶髪で少し後ろ髪が長く…
水色の割烹着を着た青年に姿が変わった。
「あれ…?」
「お?」
桜梨と青年はびっくりして瞬きし…
散歩してる老人と白い犬が通り掛かり…
「なんだ?兄ちゃん食い逃げでもして料理人に追い掛けられたのか?
山道なのに御苦労なこった。兄ちゃんや、非行に走っては駄目だぞ」
老人は二人にそう言うと…何事もなく通り過ぎて行く。
「…料理人って…俺の事か?」
「多分…」
青年は自分を指差して桜梨に聞き、桜梨も困惑しながら青年に答えた。
「「人に見えてる!?」」
山道に青年と桜梨の声が響く。
「だったら…僕…試したい事があるんです」
「試したい事?」
桜梨の言葉に青年はキョトンとする。
「はい…実は御世話になった近所の高校生のお兄さん達が…一ヶ月前…僕の家の前で他界してしまい…地縛霊として成仏していないんです…」
「ですから…僕が触れば…二人も実体化出来るかも知れないと思って…」
桜梨は目を下に臥せて青年に言う。
「…分かった。それなら試して見ようぜ。俺の主はお前だ。お前の好きなようにすれば良い」
ニッコリ笑って青年は桜梨に答える。
「ありがとうございます?」
嬉しそうに笑って桜梨は青年に礼を言った。
最初のコメントを投稿しよう!