第3滅「最強魔王降臨せん」

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…愛華…こんなに可愛い妹を幽霊になっても困らせるとは…慎也は兄としてけしからんな… 愛華の様子に華林は胸を痛めると… 『よし、分かった…幸い、任務場所は近辺だし…慎也が居座る高校にも近い。この兄が代わりに行ってやろう』 華林は愛華の肩に触れ、優しく微笑んで言う。 「本当に良いんですの?お忙しいので無くて?」 愛華は上目遣いで華林を見詰め尋ねる。 『兄に二言は無い。構わんさ』 笑って華林は愛華に答えた。 「華林兄様…ありがとうございます」 …よっしゃっ!!さっすが兄貴!! 涙ぐんで弱々しく、お礼を言うが内心愛華はガッツポーズを決めていた。 …うーむ…華林様と旦那様だけだな…愛華御嬢様の本性知らないの… そんな華林の後ろで、苦笑して青年は肩を竦めている。 白に近い水色の髪で短髪、白いスーツを着た半透明な姿の青年。 明沼朱火(あけぬまあけび)(28)。 華林に幼い頃から仕えている従者で、華林の任務にはパートナーとして同行しているが… 任務中の事故で共に他界し、霊力が強いので実体化かも保てて…今でも華林と共に任務をしている。 『それでは…愛華、寝込んでいる父の看病を頼めるか?』 「お任せ下さい。しっかりと御父様の看病をしますわ」 華林に頼まれ、愛華は笑顔で返事をした。 『うむ。それじゃ行って来る』 「行ってらっしゃいませ。華林お兄様…お気をつけて」 華林が挨拶をして背を向けると、愛華は頭を下げて見送る。 『行くぞ、朱火』 『御意』 華林は朱火に声を掛け、朱火は恭しく頭を下げて返事をすると… 華林の後ろから朱火もついて行くのだった。 同じ頃。 朝の8時過ぎ。 「あー…美味しかった。満腹、満腹」 セーラー服から、桜梨に借りた黄色のジャージに着替えた苺は… 茶の間で幸せそうな顔をして、仰向けに横になり天井を見詰めていた。 「食いしん坊は相変わらずだな。幽霊の癖に良く食べる」 桜梨と、自分達の服を洗うため、洗濯籠を持って通り掛かった杏は… そんな苺を見て呆れ溜め息をつく。
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