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「でも…いくらなんでも…おかしいだろ…家族なのに…霊感があるから、気配を知られているのも分かっている筈だぜ」
困惑を隠せない凌は冷や汗を掻き…
「お母さんやお爺ちゃん、お婆ちゃんは…成仏していると思います。…でも…お父さんだけが…」
下に俯くと、桜梨は涙目になる。
「…桜梨…分かった。苺や杏に気付かれないように…俺が部屋に行って様子を見てきてやるよ。部屋を教えてくれるか?」
優しく桜梨の頭を撫でて尋ねる。
「凌さん…ありがとうございます。お父さんの部屋は…一番奥の突き当たりにある部屋です」
顔を上げると、涙目になりながらも礼を言って桜梨は凌に部屋を教えた。
「突き当たりの部屋な?分かった、買い出しの前に行って見るよ」
凌はニコッと笑って、着ていた割烹着を脱いだ。
「お願いします」
ペコリと桜梨は頭を下げお願いする。
……何話してるの…?二人で…気になる…気になるけど…
…ウーム、此処からじゃ良く聞こえない…
苺は俯せに寝転がり、キッチンを見詰めるが…
二人の会話まで聞こえないので、目を細めた。
同じ頃。
杏は洗濯室に居た。
ゴウン…ゴウン…ゴウン
洗濯機は音を立て左右に揺れている。
「洗濯が終わるまで時間が掛かる。他に桜梨の洗える服でも持って来るか…」
杏が呟いて、動こうとした時だ。
カタンッカタンッ
「…これは…」
後ろから音がして、杏が振り返ると…
桜梨の洗濯物が入った籠が2個置いてあった。
…おかしい…先程までなかったぞ?
…凌さんと桜梨はキッチンだし…苺は満腹で寝てる…
…じゃあ…この籠は…
「生きている時も、人の気配がして不自然だと思って居たが…もしや…桜梨のおじさん…か?」
杏は顎に手を当て、ポツリと呟く。
パタパタパタパタッ
その声が聞こえたのか、洗濯室の扉から慌て遠ざかる足音が聞こえた。
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