第1滅「犬猿は今も昔も」

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第1滅「犬猿は今も昔も」

翌朝、桜梨は5時に起床する。 「お腹空いたな…コンビニ行こう」 眠い目を擦りながら、桜梨は呟くと… バサッパサッ パジャマを脱いで下着姿になれば… バタンッバタンッ クローゼットを開けて、オレンジ色のジャージを取り出し… 手早くジャージに着替えると… 財布を手に、部屋から出て行く。 途中、仏壇がある部屋に入ると… 「父さん、母さん、お婆ちゃん、お爺ちゃん行って来ます」 仏壇に奉られている家族の写真に手を合わせて、桜梨は家を出た。 桜梨の家族は、五年前事故で他界し…留守番をしていた桜梨だけが助かった。 元々、一族に纏わる鬼神を祭神に祭った神社を営んで居たのだが… 廃神社になってしまい、桜梨は財産欲しさに目を眩ませた親戚を断り…財産を受け継ぎ… それ以来、広い廃神社兼住宅に一人で暮らしていた。 戸締まりをして、家から外に出ると…朝方上がった雨の影響で、薄く霧が掛かっており… 視界が霞んで見える。 ……雨上がりは嫌なんだよな…僕は… 気配が感じる方向を出来るだけ見ないように、桜梨は意識しながら歩き去ろうとする。 一見、何もない路地の一角。 そこには大きな衝突を受けたのか、ガードレールがひしゃげており… 真新しい花やお菓子、ジュース等が供えられている。 そして、その隣には半透明な女子高生の姿が… 腰まである長い髪をツインテールにし、水色のセーラー服を着た女の子? 清水苺(しみずいちご)(18)。 近所に住む女装する男子高校生だったが、一ヶ月前事故に巻き込まれ他界してしまった。 苺は生前、霊感が強く…桜梨の事を弟のように思ってくれて毎日、朝昼晩と休みの日でも… 家事をやってくれていて、苺は桜梨の頼りになる兄のような存在だったが… 死んでも尚、桜梨の事が心配で自我を持つ地縛霊となり事故現場に縛られている。
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