第2滅「ようこそ僕の家へ」

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『なら良いが…』 『辻岡杏!!俺と勝負しやがれ!!』 『……』 杏が言い掛けた途端、馬鹿でかい声がして… 迷惑そうな顔をしながら杏は振り返る。 『幕末と現世…負けっぱなしだったが…今日こそは俺が勝つぜ!!』 そこには、筋肉質な体つきの黒帯を締めた柔道着姿の少年が立っていた。 少年も半透明であり幽霊なのは違いない。 『また来たの?礼の山田君…』 呆れた顔をして、苺は杏に問い掛ける。 『その様だ。前世でも隠れ家を突き止めては俺に挑んで来たが…負けた癖に…』 『現世でも生前俺に挑んで来たが…やっぱり負けてる…』 『いい加減諦めて貰いたい物だがな…』 杏は苺に答えると、肩をすくめ困り果てた。 『山田君…いや…山縣さん。俺や苺が途中で死んだ後…総理大臣にまで出世したんだから良いでしょ?』 『こんな仏頂面なんか諦めて、早く成仏してまた生まれ変わった方が良いよ?』 苺は杏に助け船を出して山田に言う。 『いや、それは辻岡…吉田が生きてたら必ず総理大臣になっていた。俺はただ運が良かっただけだ』 『故に、吉田に勝たなければ意味がない。沖田…お前に俺が見つかっていれば真っ先に斬られ死んでいたのは俺だ』 『まぐれで生き残った俺は、結局視察先の韓国で殺された。強かったら殺されなかった筈…』 山田は腕を組んで苺に言い返す。 『殺されたって老人になってたからでしょ?それに電車に乗ろうとしてたから仕方無いよ』 『不意討ちで死ぬなら…幕末も多かった。仕方無い…』 苺と杏は顔を見合わせて言うが… 『高杉さんにも…入江さんにも…久坂さんにも…吉田先生にも申し訳無い…だからお前に勝ってから報告したいんだ』 それでも山田は頑なだ。 『さっきから呼び捨てだが…俺は前世で年上だぞ?高杉達と一緒に四天王の名を轟かせていた…』 『何故俺だけに拘る?高杉達には挑まないのか?』 冷や汗を掻いて杏は山田に問いかけた。 『行ったが…断られた。先生には笑われた。まともに相手にされなかったが…お前だけは真面目に相手にしてくれる』 山田は真っ直ぐに杏を見詰めて答える。
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