七章 柔らかな鎖

16/32
前へ
/32ページ
次へ
・ 「優しくしてやってキスだけで泣く女はそうそうお目にかかれん。お前はやっぱり俺を充分に楽しませてくれるようだ」 「──…っ!!」 からかわれて口ごもるルナを無視してグレイは笑みを含んだまま、また唇を重ねた。 想いがこちらへ傾いてきたのなら心配はなかろう── 柔らかな唇の上で、空気の音がチュっと跳ねる。 グレイは重ねたルナの唇に軽く吸い付いた。 「……城での扱い方を少し変えてやる。お前に多少の自由を与えてやろう……」 「──!…」 「今度からお前から俺の部屋へ来るがいい」 「なっ…そんな行くわけなっ……」 ルナは振り上げた手をグレイに遮られながら憤っていた。 余裕の台詞に悔しさが募るが、でもいつもみたいに腹立たしくはない。 ルナは自分で心が揺れているのがわかっていた。 皮肉を言われても、バカにされていても泣けるほど辛いと思えなくなっている。 グレイはそんなルナを覗き込むように見つめ、口を開いた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

139人が本棚に入れています
本棚に追加