七章 柔らかな鎖

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・ 深い森の闇の中── 生い茂る樹木の間から差し込む月光が、妖しげな輝きを放つ。 その光りは闇に佇む少年の美しい銀髪を惜し気もなく際立たせていた。 ゆるいクセのある柔らかなプラチナブロンド。青白い頬とは対照的に薄い唇が艶やかに赤く染まっている。 あともう少し… あともう少しで願いが叶う── 儚げな眼差しで遠くを見つめる。 その瞳は紅いルビーのように魅惑的な色みを帯び、ふっと上がる口角からは真っ赤な雫が伝い落ちる。 喉に溜った濃厚な液体を流し込むように顔を仰ぐと、少年はゴクリと喉を鳴らした。 赤い瞳を閉じて甘い血の余韻を味わう。 恍惚とした笑みを浮かべる少年の腕からは、生気を無くした少女の躰がドサリと崩れ落ち、蝋人形のように地面に横たわっていた。
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