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暗い森の中で闇に身を潜めた魔物達が少女の屍を物欲しそうに見つめる。
「あとは君達の好きにすればいいよ……」
少年は汚れた口元を拭いながら舌舐めずりをすると冷たい視線をその屍に投げかけ黒い革靴の先でこづいた。
あともう少し、力があれば──
グレイ様の魔力を借りずとも僕は自由になれる
自由に狩りが出来るんだ……
少年はもうじき叶う願いにこの上ない美しい微笑みを浮かべた。
◇◇◇
「旦那様、夕食は如何致しましょう?」
自室のソファで寛ぐ主人にモーリスは尋ねた。
「今宵は必要ない──」
「左様でございますか…では今夜は外出先でお食事されるということで…」
グレイはそう尋ねかけたモーリスをちらりと見た。
「今宵は最高の美酒を浴びるほど頂く予定だ。礼儀を欠いては失礼になるからな…」
「……?」
グレイはそう呟くと意味深な笑みを浮かべて見せた。
「モーリス、今から湯を浴びる用意をしといてくれ…」
細めた瞳に色気が漂う。
笑みを浮かべたままのグレイのその表情をいぶかし気に見つめ返すとモーリスは無言で頭を下げて部屋を出た。
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