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「魔物って言ってもそんな都合良く現れる訳じゃないわ…っ大丈夫…」
祈るように呟きながら門の前ですくむ自分の足に気合いを入れて、ルナは一歩を踏み出し息を飲んだ。
なんのヘンテツもないただの深い森。
そう思っていたそこは、異様な世界の樹海という姿をルナの前に現したのだ。
地面から剥き出した樹木の根、どす黒い紫色の花々。
その不気味な植物達は地面を這いながら自由に動き回っている。
非常にゆっくりとした動作が気味悪さに拍車を掛けていた。
「やだ…っ…戻らなきゃ――…!?っ」
慌てて振り返ったルナは目を見開き呆然と立ちすくんでいた。
なぜならたった今、出て来たばかりの筈の館の門がどこにも見当たらなかったのだ。
ルナは薄気味悪いこの樹海にいつの間にか取り囲まれていた。
「…うそっ…な、んで……嘘っ…」
『“…人……間…”』
ふと、うろたえるルナの気配に気づいた樹木達が一斉にルナを振り返る。
『“人間……いる…”』
『“生きてる……”』
『“うまそう……若い魂だ…”』
「──っ…あ…イ…ヤッ…うそ…っ嫌、来ないでーっ」
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