七章 柔らかな鎖

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・ 「魔物って言ってもそんな都合良く現れる訳じゃないわ…っ大丈夫…」 祈るように呟きながら門の前ですくむ自分の足に気合いを入れて、ルナは一歩を踏み出し息を飲んだ。 なんのヘンテツもないただの深い森。 そう思っていたそこは、異様な世界の樹海という姿をルナの前に現したのだ。 地面から剥き出した樹木の根、どす黒い紫色の花々。 その不気味な植物達は地面を這いながら自由に動き回っている。 非常にゆっくりとした動作が気味悪さに拍車を掛けていた。 「やだ…っ…戻らなきゃ――…!?っ」 慌てて振り返ったルナは目を見開き呆然と立ちすくんでいた。 なぜならたった今、出て来たばかりの筈の館の門がどこにも見当たらなかったのだ。 ルナは薄気味悪いこの樹海にいつの間にか取り囲まれていた。 「…うそっ…な、んで……嘘っ…」 『“…人……間…”』 ふと、うろたえるルナの気配に気づいた樹木達が一斉にルナを振り返る。 『“人間……いる…”』 『“生きてる……”』 『“うまそう……若い魂だ…”』 「──っ…あ…イ…ヤッ…うそ…っ嫌、来ないでーっ」
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