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「……もうお休みになられたのでは?」
「部屋は先に調べた! 部屋で寝ていなければどこで寝ると言うんだ!?」
ルナ自身が眠りについて居れば確かにその意識を探ることは出来ない。
だが最初に耳にしたあの叫び声がどうしても引っかかる。
今夜のことを避けたくて館の何処かに隠れて居るのならいい。
館の敷地内に居てくれればいいのだが──
“絶対にここから逃げ出してやるっ!”
ルナの言った言葉が霞める。
グレイの胸の奥に不安の陰が色濃く浮かんでいた。
モーリスは手にしていたティーカップを置くと、ふと窓際へ足を向けた。
「やはり…門が……」
「……なにっ」
気を集中してルナの居所を探るグレイにモーリスの呟きが聞こえた。
グレイはツカツカと窓に近寄り館の門を確認した。
遠目に目を細めると、開け放たれた門がゆらゆらと無造作に風に揺られている。
…っ…なぜ開いてる!?
「…ルナに開けられる筈は…」
グレイは眉を寄せた。
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