七章 柔らかな鎖

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・ 返事を確認すると、扉越しに遠のいていく足音を耳にしながらルナは自分のお腹を押さえた。 晩餐が開かれる前にと、昨夜早めに取った夕食のせいで、今はすっかり空腹ときている。 「まだ横になっていたい……」 大きな溜め息を一息。 お腹はこんなに空いてるのになんだか食べる気がしない。 身体にだるさを覚えながらベッドから降りると寝間着を着替え、ルナは居間に向かった。 この館に連れてこられてひと月は経っている筈。 居間に向かいながら廊下の窓から見える外界の景色を眺めルナは遠くの町並みに目をやった。 館の周りを囲む大きな森。まるで行く手を阻む様に暗く深い森は壁そのものとしてそびえている。 森の上は灰色の霧が覆っていた。 あたしは一生ここから出られない…… ルナは呪われた呪文の様に自分自身に言い聞かせた。 「ルナ様。今朝は少し冷えるようでございます…今日は温かいスープを先にご用意致しました」 モーリスはルナが居間へ現れると直ぐに食事を用意した。
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