2

2/8
前へ
/12ページ
次へ
「今年のチョコレートは去年より知性が高いみたいだな」 窓に張り付いてすぐに室内に入り込み、内側から鍵を開けていた。あれによって車内に大量のチョコレートの侵入を許してしまったのだ。 「いいカカオ使っているんでしょうね」 柳が皮肉気につぶやく。バレンタインデーとは昔は女の子が意中の男の子に自分の好意を伝えるとともにチョコレートを渡す習慣があったらしい。 しかし、現代は違う。奴らはある日突然現れたらしい。生態も生まれてきた理由も分かっていない。分かっているのは奴らの目的だけだ。 奴らの目的はただ一つ。誰かに食べられる事。それに尽きる。奴らが俺たちに襲い掛かってくるのもただ食べられたいからなのだ。俺たちに近づき口から強引にでも自分を食べさせるのだ。 チョコレートには様々な効能がある。曰く頭の回転が速くなる。免疫力があがる。脂肪を分解する。しかし、それらは当然食べ過ぎないことが前提なのだ。 人型のチョコレート奴ら一人分を食べさせられてしまった人間の末路はひどい。翌日からの胃もたれ体重増加に肌荒れ。何よりもう甘いものは食べたくなくなるほど奴らは甘いのだ。 奴らは2月14日しか生存できない。朝突如、どこからともなく現れ日が沈むと同時にその体は砕けちっていなくなるのだ。 この日一日だけ。俺たちはチョコレートから逃げ回り、奴らは俺たちに食べられるために追いかけ続ける。これが年に一度のチョコレート戦争だ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加