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「なるほどね。にしても、情報が少なくてなんとも言えないわ」
「だよな」
幼稚園児だった俺達が今みたいにスマホやら携帯やらを持ってたわけでもない。
一応昨日親に聞いては見たが、親同士も連絡先は知らないらしい。
「そもそも、名前は確か?名字とか分からないの?」
「名字は覚えて無いな。物心付き始めた時には、もうりきって呼んでたから」
…問い詰められると、本当に「りき」だったかも怪しく思えてくる。
「みき」とか「ゆき」とかだった気さえしてくる。
「じゃありきちゃんについて覚えてる事も少ないのね」
「そうなんだよ。分かるのは通ってた幼稚園と…」
そこまで言って、俺は口を開けたまま固まった。
大切な情報を持ってた事を思い出した。
「…家、知ってる」
「貴重な情報じゃない。そこに行って見たらどうかしら?」
やばい、ソワソワしてきた。
これで…りきに会えるかもしれない。
利喜にお礼を言い、午後の授業では彼女と会った時に話す内容を考えた。
そして放課後。
「矢島ー。お前文化祭の実行委員だろ。放課後集合だってよ」
…なんでこんな時に!
日ごろの行いが悪いせいか?
そんな足止めをくらい、予定より1時間遅く学校を飛び出した。
前向きに考えよう。
このくらいの時間なら、りきも家に帰ってるはずだ。
幼少期の記憶を頼りに道を走る。
この曲がり角を曲がってから3つ目が、たしかりきの家。
そして曲がり角を曲がる。
そこに、目的の家に入ろうとしている人影が。
「りきーー!」
「!」
俺は駆けつけながら叫ぶ。
すると、その影は一瞬驚いて振り向き、慌てて家に逃げ込んだ。
あれ、今のって…。
そして家の前までたどり着く。
家の前には誰も居なかった。
しかし、さっき見た人は、俺の見間違いではなかった。
「渡…」
門の前の名前を見て確信した。
渡…京子は、りきとの接点がある。
…今度こそ、しっかり彼女と話をしよう。
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