思い出の場所で

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思い返せば、彼女がりきと関係があることは明らかだった。 俺の名前を聞いて驚いたことや、呼び捨てで良いといったときに「だいちゃん」と呼んだこと。 そして、りきが俺を覚えてるって言ったときの表情。 頭が一杯だったのは俺の方だ。 まともに話も聞かず、ただ思い込みで動いていただけ。 鍵は目の前にあったのに。 放課後まで、隣の京子とは一言も話さなかった。 彼女も俺を避けるように動いていたし、俺は作戦を考えていたから。 そして、待ちに待った放課後。 俺はHRが終わってから30分くらいしてから下校していた。 目的地は自宅…ではない。 昨日と通った京子の家を通り過ぎて少し。 ある公園にたどりついた。 俺は、この公園にある人が居ると見込んでた。 そして、その予想は当たった。 「京子!」 「へ?あっ」 彼女は俺の顔を見るなり固まる。 その間に駆け寄る。 彼女ははっと我に返ると、すぐ逃げられるようにと半歩体を引いた。 「まって!俺、京子と話したいんだ」 「わ、私は…話したく無い、です」 すっかり警戒されたまま。 さらに半歩程距離をおかれる。 「…分かった。いやだったら帰ってもらって構わないから。俺の質問に答えてくれない?」 「…」 京子は足を止める。 それで、俺は彼女へ質問を始めた。 「えっと…りきって、知ってるよね」 彼女は頷く。 肯定。 「その子の名字は、渡?」 また肯定。 「りきは、京子の兄妹?」 今度は否定。 兄妹では無いらしい。 「じゃあ親戚?家族?」 それも否定。 …ここで俺の予想はかなり絞られてきた。 「えっと…じゃありきって、誰?京子の何なの?」 ゆっくりと首を横にふられる。 答えたくないようだ。 「…お願い、教えて欲しい」 情報が無くなり、思わず一歩近づいてしまう。 「…お、思いだして、欲しい、から」 「あ、京子、待って!」 彼女は、小声でそれだけ言うと、自分の家の方へ走って行った。 そこで、俺の選択しは1つに絞られた。 思い切って叫ぶ。 「りき!!!」
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