転校生は突然に

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「昔、この辺の幼稚園じゃなかった?で、俺の事大ちゃんって呼んでくれてたはずなんだけど」 俺の自信はどこから来るのか不思議だったが、さっきの即視感が忘れられない。 すると、彼女は少し驚いた顔をした。 「確かに、私はこの辺の幼稚園に居たことがあるわ。…でもごめんなさい、君の事はおぼえて無いの」 「そ、そっか」 ちょっとだけ落ち込んだ俺。 それには須田さんは申し訳無さそうな顔をした。 「本当にごめんなさい。頑張って思い出すから。その代わり、君の事は大ちゃんって呼んでいいかしら?」 「お、おう!じゃあ俺も利喜って呼ぶな」 須田さん…利喜、めっちゃいいやつだ! 絶対あの時のりきに違いない! その後、いい加減にしろと女子達に追いだされた。 まぁいい、収穫はあった。 そのうち思い出してくれるだろうか。 …いや、もし思い出せなくても、これからいい思い出作っていけばいいか。 さて、それよりもだ。 「おい、俺どっちとも話したぞ。お前は?」 「あー、お前は片方が隣の席だからな。このゲームは無効だ」 お前…絶対話せてないだろ。 インチキだ。 友人にブーブー文句を言ってると、1限目の講師がきた。 俺の席を陣取っていた男子はやっと散って行った。 「…えっと、大丈夫?」 「あ…だ、大丈夫、です。ちょっとこういうの、慣れてなくて…」 そして、残された渡さんは少し疲れた顔をしていた。 このクラスのやつら、容赦ねーからな。 「ごめんな。無神経なやつらで」 「い、いいんです。あ、ちょっとお願いが…」 遠慮がちに俺の方を見る渡さん。 息が上がっていたのか、高揚している顔に目を奪われる。 「お、お昼、校内を案内、してもらえませんか?」 「え、俺?…別にいいけど」 緊張した面持ちの彼女とは違い、俺は冷静に答える。 それで彼女は小さく「よかった」と呟いた。 そして、俺の内心はめちゃくちゃ焦っていた。 何この子可愛い!とか。 もしかして俺に気がある!?とか。 これは何かのフラグか!とか。 とにかく下心で埋め尽くされた上で、平静を装って格好付けてみた。 結局、午前中の授業は全く頭に入らなかった。 隣の女の子が気になってたんだろう。 仕方ない、可愛いんだもの。
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