転校生は突然に

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「えっと、じゃあさっそく行く?」 「あ、はい」 他のクラスメートの目を盗み、さっさと教室を抜け出す。 渡さんも慌てて付いてくる。 …あ、利喜も誘えばよかったな。 でも彼女は他の女子達に案内してもらえるだろうから大丈夫だろう。 「えっと、何処からいこうか。職員室は行ってるよね?」 「はい」 …そういえば、さっきから違和感を感じてることがあった。 「敬語使わなくっていいよ。名前も呼び捨てでいいから」 同級生に敬語を使われるのはどうもムズがゆい。 ましてやしばらく隣の席だろうから、なるべく親しく接したい。 「い、いい…の?」 「うん、もちろん」 「じゃあ…」 そういうと、彼女は深呼吸をしてから俺を見上げた。 「…だい、ちゃん」 ドキッと胸がなった。 う、上目遣いって、結構効くもんだな…。 「お、おう。じゃあ俺も…京子、でいいか?」 ちょっと調子に乗って名前で呼んでみる。 きっと大丈夫だろうと思った…のだが、彼女は一瞬悲しい顔になった。 「あっ、うそうそ!急に呼び捨てなんて失礼だよね」 「そ、そうじゃなくって…いいです…いいよ、呼び捨てで」 俺が訂正しようとすると、彼女も慌てる。 何がなんだか。 まぁ、とりあえず呼び捨てすることに落ち着いて、改めて学校案内を始める。 俺達のクラスから近い食堂や体育館から始め、上の階の音楽室までを簡単に案内する。 「こんなもんかな?紹介すると結構あるな」 「そう、だね。まだ直ぐには覚えられなそう」 はにかんだ京子に、またドキッとさせられる。 なんか…目を奪われてしまうんだよな。 「あの…だいちゃん」 「ん?」 教室に戻りながら、お昼をどうしようか考えていると、京子が遠慮がちに話しかけてきた。 「えっと、変な事聞くんだけど…昔、りきって友達、居なかった?」 「え?」 まさかその話を京子から聞けるとは思ってなかった。
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