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もしかして、さっき利喜に言っていた話が聞こえてたのか?
「うん、いたよ。どうやら、それが京子と一緒に転校してきた彼女みたいなんだ」
彼女のことを思い出した俺は、うれしくて天井を見上げながら話を続ける。
「りきとは幼稚園が一緒で、小学校に入る前転校して行ったんだ。またねって言って別れて、やっと再会できたんだ」
申し訳ないが、忘れていたくらいだ。
でも、名前と顔で直ぐ思い出せた。
…ん?顔はあんなだったっけ。
まぁ、小さい頃の記憶だからな。
「利喜の方は俺の事覚えてなかったみたいだけどね。そのうち思い出してくれるかもだけど」
そこで隣を歩いている京子を見る。
しかし彼女は。
「…京子?どうした?」
「え、あ、えっと」
何故か俯き気味だった。
よくわからず、首を傾げてみる。
「…りき、はね」
ぽつりと呟いた声は何とか聞き取れた。
彼女も、あの子のことを利喜と呼んでいるようだ。
「大ちゃんのこと、覚えてるよ」
…慰めてくれてるのか?
でも、覚えて無いのはさっきの会話で分かっていた。
「そうだといいね」
「お、覚えてるよ、ちゃんと。別れた日の事、忘れるわけないじゃん」
必死に訴える京子。
…彼女に何が分かるんだろうか。
知ったつもりになられて、少しだけ黒い感情が浮かぶが直ぐに消し去る。
彼女は善意で言ってくれてるんだ。
「…とりあえず、戻ろう?お昼食べなきゃね」
「…うん」
話をそらす。
彼女はまだ何か言いたそうだったけど、口をつぐんだ。
その後、少しだけ彼女と話しづらくなってしまった。
そのまま午後の授業を受けて放課後。
流石に耐えられなくなってきた俺は、彼女に謝ることにした。
何が悪いのか、分かってはないが。
「あの、京子」
「…また、明日ね」
HRが終わって直ぐに声をかけるも、彼女は逃げるように教室を出て行ってしまった。
…何なんだ…。
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