転校生は突然に

7/7
前へ
/15ページ
次へ
「大ちゃん。ちょっといい?」 「ん?」 後ろから声をかけられ振り向くと、利喜がいた。 「よければ一緒に帰らない?家どこか分からないけど」 「あ、うん。いいよ」 京子のことで分からないことばかりだけど、考えてても答えは出ないだろう。 荷物を持って立ち上がる。 「友達、出来そう?」 「なんとか。でも、なんか君が一番話しやすいんだよね」 校門を出て、2人で並んで歩く。 俺と同じ方に歩いているのを見ると、多分利喜は前住んでいた家に戻って来たんだろう。 「あはは、嬉しいな。じゃあまた幼稚園の時みたいに友達になれるかな」 「…その事、なんだけど」 嬉しくてそう言ってみるが、彼女はどこか言いにくそうな声で話しを変えた。 「どの事?」 「その、幼稚園の時のこと。君の言うりきは、多分私のことじゃ無いと思うの」 バッと横を向く。 彼女は前を向いたまま歩いていた。 「え?だって、前この辺に住んでたって」 「それは本当よ。今歩いてる方向も、私の前住んでた場所に向かっているの」 俺の予想通りじゃないか。 じゃあ何で、彼女は違うっていうんだ。 「違う根拠は?忘れてるだけじゃ…」 「私も一度はそう思った。でも、私のいた幼稚園は…」 そこで目の前に現れたT字路。 俺と利喜の足は、互いに反対を向いていた。 え…確か、利喜の前住んでた家は、こっちだったはず…。 「私が通ってた幼稚園は、この先なの。君とは、反対方向よね」 「…そ、そっか」 どうやら、彼女の言っていることが正しいみたいだ。 彼女は…俺の知っていたりきじゃなかった。 「がっかりさせてごめんなさい。でも、良かったらこれからは須田 利喜として改めて友達になってくれないかしら?」 「う、うん。もちろん。こっちこそ、勝手に勘違いしてごめん」 彼女は一度こちらに近づいてきて微笑む。 俺もそれに笑って返す。 それから彼女とは別れて、自分の家に。 かなり残念だが、新しい友達が増えたんだ。落ち込むことは無い。 はぁ。 りきに会いたいな。 いま、何処で何してるんだろう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加