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「大ちゃん。ちょっといい?」
「ん?」
後ろから声をかけられ振り向くと、利喜がいた。
「よければ一緒に帰らない?家どこか分からないけど」
「あ、うん。いいよ」
京子のことで分からないことばかりだけど、考えてても答えは出ないだろう。
荷物を持って立ち上がる。
「友達、出来そう?」
「なんとか。でも、なんか君が一番話しやすいんだよね」
校門を出て、2人で並んで歩く。
俺と同じ方に歩いているのを見ると、多分利喜は前住んでいた家に戻って来たんだろう。
「あはは、嬉しいな。じゃあまた幼稚園の時みたいに友達になれるかな」
「…その事、なんだけど」
嬉しくてそう言ってみるが、彼女はどこか言いにくそうな声で話しを変えた。
「どの事?」
「その、幼稚園の時のこと。君の言うりきは、多分私のことじゃ無いと思うの」
バッと横を向く。
彼女は前を向いたまま歩いていた。
「え?だって、前この辺に住んでたって」
「それは本当よ。今歩いてる方向も、私の前住んでた場所に向かっているの」
俺の予想通りじゃないか。
じゃあ何で、彼女は違うっていうんだ。
「違う根拠は?忘れてるだけじゃ…」
「私も一度はそう思った。でも、私のいた幼稚園は…」
そこで目の前に現れたT字路。
俺と利喜の足は、互いに反対を向いていた。
え…確か、利喜の前住んでた家は、こっちだったはず…。
「私が通ってた幼稚園は、この先なの。君とは、反対方向よね」
「…そ、そっか」
どうやら、彼女の言っていることが正しいみたいだ。
彼女は…俺の知っていたりきじゃなかった。
「がっかりさせてごめんなさい。でも、良かったらこれからは須田 利喜として改めて友達になってくれないかしら?」
「う、うん。もちろん。こっちこそ、勝手に勘違いしてごめん」
彼女は一度こちらに近づいてきて微笑む。
俺もそれに笑って返す。
それから彼女とは別れて、自分の家に。
かなり残念だが、新しい友達が増えたんだ。落ち込むことは無い。
はぁ。
りきに会いたいな。
いま、何処で何してるんだろう。
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