魂なき者の告解

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「わたしの名前はね、エズメというの」 少女が関心を促したので、彼の目は彼女の面差しを追った。 彼を見つめる瞳は円らで、赤い頬にはそばかすが散る。 子供というほど幼くはないが、まだ、親の庇護を必要とする年頃である。 榛色の髪に木漏れ日が射せば、大地の匂いが立った。 少女の求めに応じて、村の人間が居酒屋に集まった。各々が発言力を持つ立場にある限られた者達だけだ。 ルルは宿泊室で介抱を受けた。 「今、手元にあるのはこれだけなんだ。礼として、納めてほしい」 彼は懐をまさぐって掴んだ物を差し出した。 銀貨が三枚。他は輝石で飾られた魔除けと教会の紋章が彫られた指輪だった。何処にでもある瓦落多(がらくた)だとしても農村の住人には大層、高価に見えただろう。 浮浪者では持てない物を身に付けていた、この気抜けの青年は都市の住人で、移動の最中に野盗に襲われたのではないかと村長にあたる老爺によって結論付けられた。 「きっと、混乱しているのだな。正気を失うだなんて、よほど、恐ろしい目にあったのだろう」 保護された翌日には、エズメが彼の様子を窺いに訪ねてきた。 ルルは夜明けには目を開いていたが、次々と浮かんでくる記憶探りに夢中であって、現れた少女には構わずにいた。 「ねえ、うるさくない?」 笑い声が酒場の方から響いている。行商人が滞在しているので、世間話に村民達が羽目を外していたのだ。少女は粗野な大人達の騒々しさが苦手らしく、その場に留まることを嫌っていた。 「散歩はどう?」 ルルはエズメによって表に連れ出された。彼は陽光を仰いだきり上の空になって、手を引かれながら歩いていた。 「あそこにあるのは、礼拝堂か」 ルルが意志を持って、足を止めた。 「貴方達のことを祈ろう。父の加護があるように」 彼は自ずからエズメを誘い寄せる。 ようやく、世界との繋がりの価値を少女の存在に覚えたようだった。
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