第1章 めざめ

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プロローグ 海から三日月が昇り、海面にそれを映した頃。 タクシーは埠頭に向かって走っていた。 何台も並ぶクレーンを照らすオレンジのライトは まるでブレードランナーの世界のようで、 さっきから後ろで一言もしゃべらない女は 不気味で運転手はルームミラーでチラッと見るたびに 目が合っていた。 「お客さん、この先は関係車両しか入れませんが」 運転手はゲートの前にタクシーを止めた。 「行って!」 女はヒステリックに声を出した。 「そう言われても警備員がいますから」 「あなた、夜野礼司?」 「いいえ、朝野健司です」 フロントの左前にある乗務員証を指差した。 「そう」 女がため息をつくと手を触れもしない タクシーのサイドブレーキが外れて 朝野が踏んでいないアクセル下がり タクシーは動き出しゲートのバーを飛ばして スピードを上げ埠頭を真っ直ぐ走り 突端の縁石の前で止まった。 運転手は恐怖で体を震わせていた。 「す、すみません。急に動き出してしまって・・・」 「責任とってもらうわ」 「ズボッ」 後ろの客席から鈍い音がすると 朝野の胸から手が飛び出し その手には真っ赤でリズミカルに動く 心臓が握られていた。 その手が後ろに引かれると 女はそれに噛みつき食いちぎった。 「やはり、生はおいしいいいわ」 女の口の周りは真っ赤に濡れ 白目が赤く染まっていた。 「ごちそう様・・・」 ~~~~~ 香港の九龍にある屋敷の地下で 胸に龍の絵が描いてある中国服を 着た老人が少女に話した。 「いいか、暗鬼は2000年前 鬼に取り憑かれた人間と鬼を抹殺するために 作られた組織だったんだ」 「じゃあ、今の暗鬼とは目的が違うんだね」 「ああ。風水の研究によって鬼を 封じ込める方法が研究された為に 鬼の数が減って今は暗鬼の裏の仕事になった」 「裏の仕事って今でもやっているの?」 「依頼があればな、鬼の仕業だとは 誰も気づかず終わってしまう事が多い」 「なるほど、じゃあ暗鬼のような 組織って世界中にあるの?」
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