初恋と再会と後悔

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 校庭の桜が綺麗に咲く、卒業式の日だった。  誰かが俺の名前を呼ぶ。振り返ると、そこには初恋の相手が立っていた。  卒業証書の入った筒を持ちながら「文化祭楽しかったね」とか「大学頑張ろうね」とか、そんな感じの会話を数分だけ交わした。 「またね」  それが、彼女が東京に発つ前に俺に告げた最後の言葉だった。「さよなら」でも「バイバイ」でもなく「またね」。  再会を約束する別れの挨拶。  果たして、「またね」と言って離れた人たちの、どれくらいの割合が再会するのだろうか。  そのまま別れてしまえば、二人の人生は一生交わることがないかもしれない。  もう高校だって卒業するのだから、堂々と想いを伝えればいいじゃないか。それに、お互い離れた大学に進むんだ。玉砕したって何も問題はない。  しかし、 「うん、またね」  俺の口から出てきたのは、そんな台詞で。ああ、我ながら情けない。  そうして、俺の初恋は桜の花びらのように、儚く散った。  ところが、その台詞の通り、数年後に俺たちは再会することになる。  彼女は就職の都合で引っ越してきた。その場所が、偶然にも俺の家の近所だったのだ。 「久しぶりだね」  そう言って微笑む彼女の前で、俺は呼吸が一瞬止まってしまう。数年ぶりに見た彼女は、あの頃の面影を残しつつも、息をのむほど綺麗になっていたから。
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