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そして現在、俺の腕の中には、彼女の子供がいる。天使のような寝顔で眠るこの一歳半の女の子は、きっと彼女に似て美人になることだろう。
「あいつはさ、俺の気持ち知ってんのかな」
腕の中の天使が、目をパチリと開いた。かなり小声での独り言だったつもりが、起こしてしまったようだ。
「あーう」
「ああ、ごめんな」
まだ髪の薄い部分のある頭を優しく撫でる。
彼女は、夫と共に近所に引っ越してきた。そのときには、この子はすでに彼女のお腹の中にいた。
天使を産み落とした女神は、一年間育児休暇を取得し、すぐに再就職した。ばりばりのキャリアウーマンらしい。
優秀な彼女は、必然的に出張も多くなる。遠くへ行ったり泊まりになるときに、俺の職業が在宅SEであることを知った彼女は、こうして俺に娘を預けていく。夫も彼女同様、忙しいようだ。
育児をおろそかにしているとか、そういったことはなく、仕事の合間に愛情を注いでいるのだろうということは簡単に予想できた。
腕の中で、口をパクパク動かしているこの子からも、それは感じられる。
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