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「ふ……ぅん」
顔の向きが上下逆さまという状態でのキスは、少しやりにくさを感じられる。だがいつもとは違うところを刺激され、律斗の呼吸はすっかり上がってしまった。
「ぁ、ん…ん……っ」
下唇を甘噛みされるとくぐもった声が零れ、挿入された舌と律斗のそれが擦れ合うと、背筋にぞくぞくとしたものが走り抜けた。
無理な体勢をしているせいで首が痛かったが、キスの心地良さには抗えない。首の辛さを誤魔化すように時折襟足を指先でくすぐられ、肩が小さく跳ねた。
「んん…ぅ……っは、はぁ…」
久保坂は律斗の口の中をたっぷりとねぶった後、ようやく唇を解放してくれた。熱に浮かされているせいで、至近距離で見つめ合っているだけでも目が潤んでしまう。
そんな時、不意に久保坂が呟いた。
「俺、先輩とずっとこうしていたいです……」
「――っ!」
絞り出すような声に、ぼんやりとしていた頭が冷水をかけられたかのように醒めてゆく。
「ごめん……」
「謝ることなんてないっス。けど、どうして東京の大学行っちゃうんですか」
「……こんな田舎、早く出て行きたかったんだ」
今日が最後というのも、律斗が明日、この福島の片田舎を離れるからだ。
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