ラズベリー

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◆◇◆ 長い地下通路を抜けて地上に出ると、ルルウは近くの電灯に寄りかかった。 込み上げる吐き気をこらえながら、荒い呼吸を繰り返す。 堪らずズルズルとしゃがみ込んだところで、「大丈夫かー?」と陽気な声が降ってきた。 視線を上げれば、顔馴染みの同僚が自分を見下ろしていて。 「……こんなところで何してる」 「何って、お前が心配だったから迎えに来たんだよ」 「余計なお世話だ。ここはごく一握りの人間以外、立ち入り禁止の区域。早く戻れ」 「真っ青な顔してよく言うぜ。今にもぶっ倒れそうじゃねーか。ほら、掴まれよ」 グッと眉をひそめながらも、ルルウは差し伸ばされた手をとった。 いくら言い聞かせたところで、この男が大人しく帰るとは思えない。ならば送り届けた方が確実だ。 「今度違反行為を見つけたら、上官に突き出すからな」 「パートナーを売る気かよ。よせよせ。このバルト様がいなくちゃ、狩りの成績が落ちるぜ? 堅物なお前とつき合えるのなんて、心の広い俺だけだ」 二人は入隊時期が近かったこともあり、チームを組まされることが多かった。 性格こそ噛み合わないものの、戦闘に関してはバルト以上に息の合う者はいない。素行に問題があることを除けば、ルルウ自身彼を高く評価していた。 「にしてもお前、よくやるよな。上官の命令とはいえ、こんなにふらふらになって。頼むから、死体になって運び出されたりするなよな」 バルトに支えられ、ルルウは日差しが照りつける石畳の道を歩く。頭が割れるように痛かった。 今、何時だろうか。宿舎に戻って少しでも休まなければ。夜になれば、夜行性の吸血鬼(やつら)が、闇に紛れて攻めてくる。 「任務に危険はつきものだ。それに、体調が悪いのは彼女のせいじゃない」 「でもよ、やっぱり特殊すぎるだろ。どうかしてるよ」 バルトはそこでチラリと辺りを見回して、あからさまに声を落とした。 「ーーよりによって、“吸血鬼”と逢い引きしろ、なんてさ」
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