第1章

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その浮浪者風のおじいさんが気になったのは、 真っ黒に汚れた顔と、ボロボロの身なりに不釣り合いな、真っ白い新品のスニーカーを履いていたから。 そして、履いていたスニーカーは、片方だけで、右は素足だった。 「…」 私は、彼の前を通り過ぎ、足早に学校へ向かった。 憂鬱な1日の始まり。 教室に入っても、交わす挨拶なども無く。 クラスメートは皆、棒人間のよう。 幸い、特別な授業も今日は無く。ただ穏便に1日が過ぎる事を願った。 困った事が一つ起こった。 クラスメートの山崎さんが、私の席に座って隣の席の友達とお喋りをしていたのだ。 私は声を掛ける事を躊躇した。 それは、彼女が苦手だったからだ。 なぜか私は彼女に嫌われているらしい。 一方的に、羨ましく思われているのだろうか。それとも、妬ましく思われているのだろうか。 あからさまな虐め、嫌がらせは無いものの、陰口や、白い目で見られる事は何度もある。 私は怖かった。 それでも、私は席に着け無い事に困り果て、いよいよ声を掛けた。 彼女が、私を攻撃してこないで欲しいと思いながら。 ギャハギャハと朝からけたましく笑う彼女に、恐る恐る私は声を掛けた。 「や、山崎さん、ここ、私の席なの…」 「えー、まだ授業始まらないでしょ、先生来たら退くわよ」 「でも、予習したいの、だから…」 「ムリ。ちょっと今、大事なところなの」 「山崎さん…」 私を無視して、お喋りを続けてしまった。 何も言い返せないで、私はその場で立ち竦んでいた。 「…」 ちょっとした注目が集まると。それに気づいた山崎さんが、口を閉じ、暫しの沈黙の後、私を見つめた。 「フンッ、嫌みなヤツ」 そう言い捨てて、自分の席に戻って行った。 怖かった。まだ心臓がドキドキしていた。 こんな時、どうしたら良いのだろう。 人と、仲良くするのはとても難しい。 私は人付き合いが苦手だ。 そして、放課後に事件は起こった。 私の靴が無くなった。
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