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「そろそろ行こうか、昴。
もう除夜の鐘が聞こえてる」
「待って。寒いからおばあちゃんもマフラーして」
「はいはい」
毎年大晦日のこの時間になると、僕とおばあちゃんは近所の神社にお参りに行くのが恒例だ。
商売をしているのもあって、年が明けてすぐにお参りした方が、なんとなく気分が良いからだ。
「はい、これで良し」
おばあちゃんにマフラーを巻いて、お店の扉をガラッと開けたその時。
「あら、黒田君」
「翔」
驚いたことに、お店の前に翔が立っていた。
「あれ? もしかして出かけるところだった?」
翔がおばあちゃんに尋ねた。
「うん、今から近所の神社に。黒田君はどうしたの?」
「俺? 俺は昴にちょっと話があって」
僕に話?
「そうなの。それなら中に入ってゆっくり話したらいいわ。外は寒いし」
「えっ、おばあちゃん?」
今から初詣に行かないといけないのに、いいの?
「私は近所の東さんと先にお参りしてるから、二人もあとでお参りにおいで」
笑顔で話すおばあちゃんに、翔は「はい」と返事をした。
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